シャンチーのルール

象棋(シャンチー)とは

象棋(以下シャンチー)は、中国将棋とも表記される中国で生まれたボードゲームです。他の将棋類ゲームと同じく、インドのチャドランガが起源。一説には紀元前から存在したとされ、13世紀頃に現在のルールになりました。

盤と駒

シャンチーで使う盤

上図が象棋(以下シャンチー)の盤です。シャンチーは紅方(あかかた)と黒方(くろかた)で戦います。盤は通常、紅方を手前に表示します。

盤中央に河界があります。盤によって「漢界 楚河」と書かれている物、何も書かれていない物があります。河界は揚子江や黄河をイメージしたもの。駒によっては河界を越えられません。

シャンチーは将棋やチェスと違い、マスに駒を置くのではなく、線と線の交点に置きます。縦線9×横線10の全90の交点があります。縦線を路(ろ)といい、紅方黒方共に、自分から見て右側から番号をふり位置を表します。紅方は漢数字、黒方はアラビア数字を使います。

両陣営にある斜線のエリアが九宮(きゅうきゅう)です。九宮は宮殿や城にあたるもので、王(紅方の帥、黒方の将)の居住区。帥と将、護衛役の士は九宮から出られません。

いくつかの交点にある💢のような印は、最初に駒を置く場所を表す目印。

シャンチーで使う駒

シャンチーの駒は紅方、黒方で各16個ずつ計32個です。将棋のように駒を裏返したり、取った駒を使うことは出来ません。

紅方の駒 呼び名 黒方の駒 呼び名
シャンチーの駒・紅方の帥 すい(シュアイ) シャンチーの駒・黒方の将 しょう(ジャン)
シャンチーの駒・紅方の士 し(シー) シャンチーの駒・黒方の士 し(シー)
シャンチーの駒・紅方の相 そう(シャン) シャンチーの駒・黒方の象 ぞう(シャン)
シャンチーの駒・紅方の馬 うま(マー) シャンチーの駒・黒方の馬 うま(マー)
シャンチーの駒・紅方の車 しゃ(ヂュ) シャンチーの駒・黒方の車 しゃ(ヂュ)
シャンチーの駒・紅方の炮 ほう(パオ) シャンチーの駒・黒方の炮 ほう(パオ)
シャンチーの駒・紅方の兵 へい(ビン) シャンチーの駒・黒方の卒 そつ(ヅー)

紅方と黒方で名称の異なる駒があります。帥と将、相と象、兵と卒がそれです。異なるのは名称だけで動き方は同じです。

紅方の帥、黒方の将が王様で、この駒が取られたら負けです。これを将死(ジャンスー)といい、将棋の詰みにあたります。

表の()内は中国語の発音ですが、中国でも地域により発音は多少異なり、あくまで目安です。さらに駒の表記も地域により若干異なります。表の駒文字は標準的な表記です。

駒の並べ方

シャンチーの駒を全て並べた盤

上画像が駒を並べた状態の盤です。

シャンチーの駒は縦線と横線の交点に置きます。将棋には大橋流、伊藤流と並べ方に順番がありますが、シャンチーに決まった並べ順はありません。

帥と将は、中央一番下の交点に置きます。紅方なら五路、黒方なら5路です。

士は、帥(または将)の両側に置きます。

相は、士の隣に置きます。

馬は、相の隣に置きます。

車は、馬の隣に置きます。車が一番端に位置取ります。

炮は、下から3番目の横線の💢印の付いた交点(二路と八路)に置きます。

兵と卒は、下から4番目の横線の💢印の付いた交点に置きます。

並べ終えたら、紅方からゲームを始めます。

駒の動き方

シャンチーの車の動き方

車は縦横にどこまでも移動でき、進む先に自分の駒があればその手前の交点まで、相手の駒があれば取ってその交点まで移動できます。河を渡り敵陣に入ることもできます。

シャンチーにおいて、車は最強の駒です。

シャンチーの炮の動き方・その1

炮は車と似た動きをします。縦横にどこまでも移動でき河も渡れます。進む先に自分の駒があればその手前の交点まで移動できます。しかし、駒の取り方で炮は癖があります。

シャンチーの炮の動き・その2

炮は手前の駒を1つ飛び越えて、後ろに居る相手の駒を取ることができます。大砲を思い浮かべると分かりやすいでしょう。

飛び越える駒は自分の駒でも相手の駒でも構いません。飛び越える駒を炮架(ほうか)といいます。飛び越えられる駒は1つだけで、炮架の後ろの後ろの駒は取れません。上図では自分の馬を飛び越えて、相手の士は取れますが、奥の車は取れません。

駒を取った場合、間に駒があっても取った駒のあった交点まで進みます。駒を取らずに前方の駒を飛び越えて移動することはできません。

シャンチーの炮の動き・その3

駒は前後左右どちらの向きでも取れます。

シャンチーの炮の動き・その4

上図では前方に相手の駒がありますが取れません。駒を取るには炮架が必要で、前方の士との間に駒がないためです。

炮は駒を取るのに炮架が必要という特性から、駒の少なくなる終盤(残局と呼ぶ)では価値が下がります。

シャンチーの馬の動き方

馬は2つ前の交点の左右2つの交点に移動でき、これを前後左右で行え、河を渡ることもできます。将棋の桂馬は前方だけで2箇所しか移動できませんが、馬は前後左右ですから8箇所に移動できます。

シャンチーの馬の動き方・その2

馬は移動したい方向に駒がいる場合は移動できません。自分の駒でも相手の駒でも同じです。将棋の桂馬は駒を飛び越えられますが、馬は飛び越えられないのです。

上画像は、馬の前方に自分の兵がいるため前方には移動できません。右側に相手の車がいるため右側にも移動できません。このように駒で馬の移動を妨害することを「馬の足をしばる」と表現します。

馬はその特性から、駒の少なくなる終盤(残局と呼ぶ)では価値が上がります。

相・象

シャンチーの相と象の動き方・その1

相と象は名称は違えと同じ駒です。相と象は斜めに2つ先の交点に移動できます。

シャンチーの相と象の動き方・その2

進む途中に駒があるとその先には進めません。それは自分の駒でも相手の駒でも同じです。駒で相・象の移動を妨害することを「象の目をふさぐ」と表現します。

移動先に相手の駒があれば、駒を取ってその交点に進みます。

シャンチーの相と象の動き方・その3

相と象は河を渡れません。上画像では相と象が河の前に来ていますが、前方にはそれ以上進めません。相と象は自陣でのみ活躍する駒です。

帥・将

シャンチーの帥と将の動き方・その1

帥と将は名前は違えど同じ駒で、前後左右の交点に1つずつ移動できます。この駒を詰まされると負けです。

帥と将は九宮から出られません。そのため、上画像で将は2箇所しか移動先がありません。

シャンチーの帥と将の動き方・その2

帥と将には対面笑(たいめんしょう)という特殊ルールがあります。対面笑とは、帥と将は直接向かい合えないルールです。

上画像は帥が五路、将が6路にいます。この時、帥は四路、将は5路に移動できません。

シャンチーの帥と将の動き方・その3

対面笑は直接向かい合うことが禁止ですから、間に駒があれば問題ありません。上画像は先ほどと違い四路に士がいます。これなら帥は四路に移動できます。間にある駒は自分の駒でも、相手の駒でも構いません。

帥や将に手がかかっている、将棋で言う王手(チェスはチェック)をシャンチーでは将(ジャン)といいます。将と書いてジャンですから紛らわしいので注意が必要です。

シャンチーの士の動き方

士は前後の斜め1つ前に移動でき、相手の駒があれば取ってその交点に進みます。士は九宮から出られません。つまり九宮の中の5箇所のみ移動できます。

兵と卒

シャンチーの兵と卒の動き方・その1

兵と卒は名称は違えど同じ駒です。前に1つだけ移動でき、相手の駒があれば取ってその交点に進みます。河を渡ることもできます。

シャンチー兵と卒の動き方・その2

兵と卒は昇格できます(将棋でいう成り)。河を渡ると前だけでなく左右にも1つ移動できるようになります。

駒はそのまま使い、将棋のように裏返したりしません。昇格しても兵と卒は後ろに下がれず自陣に戻ることはありません。そのため昇格済みを表す必要がないのです。

シャンチーの兵と卒の動き方・その3

兵と卒は後ろに戻れない駒です。昇格した兵(または卒)を安易に進め、敵陣最奥まで行ってしまうと左右しか動けなくなり弱体化します。最奥まで行った兵を底兵(ていへい)、卒を底卒(ていそつ)といいます。

駒の価値

駒ごとに異なる動きをする以上、価値に差が付きます。対局では駒が取ったり取られたりしますが、駒に点数を与えて考えることで、好手か悪手か判断しやすくなります。

下は駒の点数の一例です。

駒名 点数
帥・将 点数なし
9点
4.5点
4点
相・象 2点
2点
兵・卒 1点(昇格後は2点)

長将(千日手)

シャンチーの長将のサンプル

上画像は、黒方が車で帥にジャン(王手)をした局面。赤方が帥を上げても下げても、車は追いかけてジャンを繰り返すだけです。このようなジャンの繰り返し(連続王手)を長将(チャンジャン)といいます。

長将が許されるのは2回まで、3回目は手を変えなくてはなりません。将棋の千日手と同じですが、将棋は3回まで許されますが、シャンチーは2回までです。

長殺

シャンチーの長殺のサンプル

上画像は、殺の局面です。殺とは次に相手一手指すと詰んでしまう局面のこと(将棋の詰めろ)。

黒方は、このまま赤方の車が車三進三と動くと詰んでしまいます(士を退いて守ると炮で負け )。そこで将5平6と先回りして受けます。すると赤方は車三平四とジャンをかけます。黒方は将6平5と先ほどの場所に戻ります。今度は赤方も車四平三と先程の場所に戻ります。

このようにジャンと殺の繰り返しを長殺(チャンシャー)といいます。本場中国のルールでは長将と同じく、3回目は攻める方が手を変えなければなりません。しかし、国際ルールでは3回目が現れた時点で引き分けとなります。

困斃

シャンチーのクンビーのサンプル

シャンチーにはパスはありません。指す手が全く無くなることを困斃(クンビー)といい、その時点で負けとなります。これはチェスでいうステイルメイトです。

上画像では、赤方が昇格させた兵を進めて将を追い詰めた局面。単純に兵を前進させては将に取られるだけ。ここで赤方は馬七進六と馬を跳ねました。馬の右隣に士がいるためジャンにはなりませんが、黒方は指し手が無く困斃となり赤方の勝ちです。

馬の足を縛っている士を動かせば将が取られます。かといってもう一つの士や炮は動かせず、将も動けば兵に取られます。

長捉

シャンチーの長捉のサンプル

ある駒で相手のある駒を取ろうとする手が連続した場合、3回目は手を変えなくてはなりません。これを長捉(チャンジュオ)といいます。

上画像は、紅方が車二平一と車で黒方の車を攻めた局面(攻め1回目)。黒方は車9平8と車を逃します。紅方は車一平二と追いかけ(攻め2回目)、黒方は車8平9と逃げます。ここで紅方が車二平一と車を動かせば(3回目)長捉となってしまいます。

和(引き分け)

シャンチーで引き分けは和(わ)または和棋(わき)といいます。

合意による和

片方のプレイヤーが和を申し入れ、相手が了承すれば引き分けとなります。

自動限着による和

対局が始まり100着(100手)指された段階で、どちらも1つの駒も取られていない状態なら和となります。これを自動限着といいます。

棋譜の読み方

棋譜は一局の駒の動きを記録したものです。シャンチーの棋譜は、4つの要素で構成されます。

動かす駒:居た場所:進行方向:移動先(路または歩数)

シャンチーの棋譜の読み方。その1

上画像は、赤方が炮を動かした場面。棋譜は「炮二平五」。赤方の駒は漢数字で、黒方の駒はアラビア数字を使います。

炮(炮を)二(二路から)平(横に)五(五路へ)という意味です。平は横移動を表します。進行方向には進(前に)、平(横に)、退(後ろに)があります。

シャンチーの棋譜の読み方・その2

4番目の数は路の場合と歩数の場合があります。上画像は、黒方が車を動かした場面。棋譜は「車1進5」。これは1路に居た車を前に5つ進ませたという意味で、5路に進ませたのではありません。5路に進ませた場合は進ではなく平を使います。

移動先が今居る路と同じ路の場合は、動いた歩数を使うのです。

シャンチーの棋譜の読み方・その3

上画像は赤方が馬を後ろへ動かした場面。棋譜は「馬六退五」。六路に居た馬を五路へ退いたことを表します。

シャンチーの棋譜の読み方・その4

上画像は五路に2つの兵が存在します。同じ路に同じ種類の駒がある場合、前、後で区別をつけます。上画像の場合、上の兵が進んだ場合は「前兵進一」、下の兵なら「後兵進一」。

同じ路に同じ種類の駒があっても、どちらが動いたか分かるなら前後はつけません。上画像は兵ですがこれが車とします。「車五退二」なら後ろの車しかありえないため、後五退二とは書きません。3つの駒がある場合は「前、中、後」を使います。

シャンチーは紅方と黒方の一手一組で表記します。この一組を1回合といいます。表記方法は以下です。

1. 炮二平五 馬8進7
2. 馬二進三 卒7進1
3. 車一平二 車9平8
4. 車二進六 馬2進3
5. 兵七進一 炮8平9

左の数字が回合を表します。

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