アイデアの作り方

アイデアとは既存の要素の新しい組み合わせ

よくアイデアと言うと全く新しい物、今までに無かった独創的な物と捉えている人が多いですが、そんな事はまず無理です。長い歴史の中であらゆる分野の新しい事は開拓し尽くされています。

真に新しい事などその分野の誕生間もない黎明期(最初の頃)に、一番早くチャレンジした人達だけの特権です。それさえ既存の別分野のアイデアを流用しているのが普通です。

アイデアというのは「今あるアイデアの新しい組み合わせ」の事です。すでによく知られているアイデアや飽きられたアイデアを、見せ方を変える事でもう一度輝かせるのです。見せ方を変えるとは新しい組み合わせの事であり、既存のアイデアを今までに無い形でくっつけたり外したりする事を意味します。

人間が面白いと感じる事は今も昔も同じであり、昔ヒットした「面白さ」はいずれ必ずヒットします。今はまだ多用されてから日が浅いため使えないが、もっと時間が経てばまた面白いと評価される時が必ず来ます。もちろん、その時は古さを感じさせない、分からせないよう新奇性を持たせる工夫が必要です。

大事なのは過去のヒット作を分析し、面白くしている要素を抜き出し、集めた要素を色々な形で組み合わせる事です。これにより新しいアイデア(既存の要素の新しい組み合わせ)が誕生します。

アイデアの作成手順

ここでは長く読み継がれているジェームス・W・ヤングの「アイデアの作り方」から、そのやり方を解説します。ヤングはアイデアの作成方法を5つに分けています。

1.資料集め
2.集めた資料から新たな組み合わせを考える
3.作品制作を放棄し、脳の情報整理を待ち続ける
4.アイデアの発想
5.思い付いたアイデアを、実際使える形に加工する

1.は作品に関する資料集めです。ヤングはこの資料を「一般資料」と「特殊資料」に分けています。一般資料は人生とこの世の種々様々な出来事で、新聞や雑誌などで気になった情報をストックしておきます。特殊知識は作品の専門的、付随的知識の事です。テーマに関するルールや同ジャンルの過去作の傾向など。

一般資料が必要になるのは、アイデアは既存の要素の組み合わせであり、一般資料と特殊資料から得られた要素の新たな組み合わせだからだ、とヤングは言っています。そして、特殊資料は対象の作品が書き終えれば収集は終わりますが、一般資料はその後も継続的に集め続ける必要があります。

2.は集めた資料から新たな組み合わせを探す段階です。色々な要素を前後入れ替えたり、こっちとこっちをくっつけたり、思い切ってこの要素を削ってみたり、そうして何度も検討を重ねて行きます。するといつの間にかパターンが枯渇し袋小路に入ります。

3.はさんざん試行錯誤した後に、全てを放り投げて作品制作を止めてしまいます。ワインを作るように全ての準備を整えたら、後は寝かせて微生物による発酵を待ちます。頭という樽の中で脳細胞が資料から得た知識や組み合わせの努力を材料に、アイデアを生み出してくれるのを待ち続けるのです。

ヤングはこの時、唯一意識的に出来る事があると言い、それは音楽を聴いたり映画を鑑賞したり、自分の想像力や感情を刺激するものを嗜む事で、頭の中の発酵がより促されると説きます。

4.はそのままアイデアが遂に生まれるわけです。それは大抵リラックスした何気ない時なので、忘れないよう常にメモ帳など筆記用具を近くに置いておく、携帯しておく事が必要です。

5.は思い付いた時は傑作だと思えたアイデアも、しばらくすると色々な実用上の問題点が判明する。そのため実際に使えるようにするためアイデアに手を加えるのです。

これら一連の行程を経てアイデアは完成します。

アイデアをストックしよう

アイデアを生み出すには様々なネタを蓄積する事が必要です。インプットするからアウトプット出来るわけですから当然です。インプットの媒体は新聞、雑誌、テレビ、映画、小説、漫画と沢山あります。

そしてそれらの気になる点をストックしておきます。そのやり方は人それぞれでしょうが、ここでは代表的なやり方をご紹介しましょう。

○メモ帳
多くの人は常にメモ帳などの筆記用具を携帯し、思い付いた事や気付いた事をメモします。アイデアはいつ思い付くか分からず、しばらくすると霧のように消えてしまうからです。

○スクラップブック
気になった新聞や雑誌の記事を切り抜き貼り付けていくノートです。似たような物で中の台紙(ルーズリーフ)を入れ替えられるバインダー、貼り付けずに袋に入れるクリアファイルやポケットファイル(ポケットバインダー)、情報カード用のリングファイルなど沢山あります。

○情報カード
思い付いたアイデアを一枚のカードに記録する方法です。こういったカードを情報カードと言い、縦75×横125mmで無地や罫線(けいせん)の物が一般的です。大体100枚入り300円前後で販売されており、質は劣りますが100円均一でも販売しています。

1969年に出版された「知的生産の技術 」は、著者で京大名誉教授の梅棹忠夫が自ら行っていた情報の記録、保存方法を記したベストセラーであり、現在でも版を重ねて出版され続けている名著です。

具体的なやり方は、

  • 思い付いた事、気付いた事をカードにメモする
  • カード1枚につき1項目だけ書く
  • あとは箱に放り込んでおく

とてもシンプルです。後は気が向いた時に箱に手を突っ込んでカードを眺め、新しい着想を得るわけです。

本のヒットもあって、その後「京大式カード 」という商品名で専用の情報カードが発売され、現在でも受験勉強や仕事に活用されています。

○Evernote


Evernote(エバーノート)は現代の京大式カードとでも言うべきクラウドサービスです。具体的説明はここでは省きますが、要は様々な情報(メモ、Webサイトの切り抜き、画像、ボイス音声など)を突っ込んで保存でき、PC、スマホなどインターネットに繋がる環境ならどこでもメモやスクラップが出来るというものです。クラウドサービスなのでデータはクラウドサーバーに一括管理され、個々の端末での編集結果も同期されます。思い付いた事や気になった事をメモしたり、気になった新聞や雑誌の記事をカメラで撮影して送ったり(iPhone、Android版アプリで直接送れる)、目を引いたサイトの文章や画像をクリッピングして保存したり、次から次へと気になるネタを突っ込む事が出来ます。

ブレインストーミング

ここまででアイデアの作成手順(行程)は分かりました。ここからはアイデアの元となる要素の掘り下げを行う事になります。最初に紹介するのはアイデア発想法でもっとも有名な「ブレインストーミング(ブレスト、BS)」です。

BSはグループのメンバーが、あるテーマに対して自由奔放にアイデアを出し合い、出されたアイデアをきっかけにまた新しいアイデアを連想、出し合っていくという手法です。誰かが言った事が他の誰かに刺激を与え、そこから最初の人では思い付かなかったアイデアを思い付くという、互いを刺激し合う事を目的としています。

BSには基本原則があり、

1.思い付いたアイデアは、くだらない、馬鹿馬鹿しいと思えても、全て記録していく
2.批判、否定、評価はアイデア創出の段階では行わない
3.既存のアイデアに結合させる
4.アイデア創出の段階では、質よりも量を意識して連想する

出されたアイデアは記録保存され、BS後に整理分析する事で真に有用なアイデアを洗い出していきます。

マンダラート


これも連想法の一種です。自由に放射状にアイデアを伸ばしていくやり方と違い、四角形を描いてそこにアイデアを収めていきます。四角を9等分し真ん中に主題を書き、周辺のブロックにはそこから連想される言葉を書いていきます。そして、さらに発展させたいものを選び、今度はそれを中央に配置してそこから連想されるもので周囲を埋めていきます。こうして、何度も繰り返していくうちに、深くアイデアを考えていく事が出来ます。マンダラートは個人でやるアイデア発想法では一番効果的ではないかと、個人的には思っています。

マインドマップ

マインドマップ」は、昔からある有名な連想方法です。本来は効率的なノート法として作られましたが、今ではアイデアを考える時にも使用される様です。

図は一般的なマインドマップの例です。ここでは「ファンタジー漫画」のマインドマップを作っています。どういった漫画にしようか思い付くまま書いてみました。構造は中心に主題を置き、そこから放射状に連想に任せてアイデアを書き連ねていっているのが分かると思います。同じ系統のアイデアは、その枝の先にさらに枝分かれさせて書いていきます。よいアイデアが出てきたら、今度はそのアイデアを中心に置き、さらにマインドマップを描いていきます。

サンプルの図は簡単に描いた物ですからあっさりとしたものです。もっと非常に凝って描かれたマインドマップもたくさんあります。参考にする場合は、「Mind map」で画像検索されると、世界中のマインドマップが出てきます。

マインドマップは、出来るだけ多くの色、分かり易くインパクトのあるイラストや図形を用いて描く事が提言されています。しかし室長は、カラーで書くといつも疲れてしまうので、シャーペンで白黒、図形もあんまり書かずに書いてしまいます。

マインドマップをPCで書くためのフリーソフトなども存在します。以下にはそれらソフトを紹介しています。
管理人は使用した事はないので、使用感は各々試してみて下さい。

FreeMindフリーの有名なマインドマップ作成ソフトです。
日本語化などはこちら等を見て下さい。
XMindこちらも有名所のソフト。FreeMindより見た目がモダンで美しい。