【レビュー】クロス探偵物語 6/10点【PS1】

元はセガサターンで発売された推理アドベンチャーゲーム。佳作との評判のため遊んでみることにした。遊んだのはPS版。

嗚呼、懐かしき90年代

SS版が発売されたのが98年のため、作中に90年代が充満している。リアルタイムの世代のため懐かしい。テレホンカードや女性キャラのファッション、PHSは当時お金がない女子学生(通称コギャル)が持っていてピッチと呼ばれていた。よく電波が入るという噂から、女子高生たちはピッチのアンテナを伸ばして長い髪をといていた。援助交際なんて言葉も流行っていた、今も言葉として生き残っているのだろうか。今はパパ活かな。

90年代チックな茶番多し

90年代の漫画やアニメでよく見られた部類の、主人公とヒロインのわざとらしく青臭いやり取りが本作にもある。今見るとただただ恥ずかしい。年齢のせいなのか時代のせいなのかは分からないが。

その点、主人公担当声優の力量が光った。こんな非現実的で読みにくいセリフをしっかり聞けるようにまとめている。声はドラゴンボールのトランクスだが、下手な役者では聞けたもんじゃなかっただろう。

製作者の独りよがりにも付き合わされる?

第4話「依頼者」は本作の変わり種。選択肢の一切無い電子小説である。内容は文学好きのアマチュアが、既存の作品をトレースして書いたような、既視感たっぷりの青春小説である。なぜ、こんな話を入れたのか。製作途中でリソース不足を補う苦肉の策なのだろうか。

邪推するとプロデューサーなりディレクターなり、開発責任者に元作家志望の人間がいたのではないか。元々ゲーム業界は夢破れた者の世界だったという。映画やドラマ、小説、ミュージシャンになりたかったが夢破れた人々が流れ着く場所。本作の責任者にもそんな人間がいて、叶えたかった夢を本作の中で半ば無理やりに叶えたのだろうか。もし、そうなら迷惑な話だ。どこぞのだれかの自慰行為を金を払って見せつけられたのだから。真実は藪の中だが。

後半は非現実的トリック多し

序盤はそれなりに内容がしっかりしている。脇役が推理を披露するが、いやそれだとこういう矛盾や辻褄の合わない点があるでしょ、と思うと、主人公がその通りの指摘をして否定する。だが、物語も後半になるとインパクト狙いの非現実的な展開やトリックが多くなる。

これ位ならネタバレとならないと思うので書くが、第7話の最初に起きる殺人はその典型だ。椅子に座る人物の後ろの壁に掛けてあった斧が落ちる。斧が脳天から直撃した被害者は哀れ真っ二つになる。こんなこと起こるわけがない。たかが落下の力で骨も何もかも真っ二つだなんて。

総評

色々文句も書いたが面白かった。絵柄も所謂オタク絵ではなく好感が持ててテンポも良い。思った以上に声の収録も多く、特に主人公役の演技は光る。

伏線の回収が無いなど問題点があるが、恐らく続編を意識してのことだろう。残念なこと続編は無い。開発会社のワークジャムも倒産済み。

コメント

タイトルとURLをコピーしました