【金融入門】金融って何のこと?

金融業とは?

金融業の基本

金融業を端的に言えば、お金を貸してそのレンタル料(金利)を貰うという商売です。お金が余っている人から不足している人へ融通し、その料金として金利を貰うので「金融」と書きます。金融業は昔からあまり快く思われていません。よく引き合いに出されるのがシェイクスピア作「ベニスの商人」でしょう。古今東西、昔からお金を貸す仕事は蔑視の対象とされてきたのです。しかし、金融業がなければ世の中が立ち行かないのも事実であり、ただ金融業に従事しているというだけで色眼鏡で見るのはいかがなものかと感じます。

金融業の要素を挙げると「資金調達」「顧客開拓」「審査、融資」「債権回収」の4つに表す事が出来ます。まず商売をするための資金を調達し、その融資先を開拓し、訪れた人が本当に貸しても大丈夫かどうか判断し、最後に貸したお金を金利を含めて回収します。

お金の賃借により貸し方は債権を持った債権者となり、借り方は債務という義務を負った債務者になります。

借金は資産形成の加速器

よい投資先があり、今投資すれば1年後に1.5倍に増やせるとします。しかし、今のあなたにそのお金がありません。今から資金を貯めようとしても、貯まった頃には儲けの種は消えそうだ、そんな状況にあなただったらどうするでしょうか。この時、効果的なのが借金です。

よい投資先は運用利回り150%と高く、300万円投資すれば1年後に450万円になっています。300万円を5%の金利で借りられれば、金利分の15万円を含めた金額を返済しても、手元には135万円が残ります。借りなければ135万円を手に入れるのにもっと長い時間がかかったはずです。借金とは資産形成の加速器であり、目標とする資産額をより短期間に実現してしまう力を持っているのです。

多くの人が今の1万円と1ヶ月後の1万円を同じ価値だと思っています。しかしそれは間違いで貨幣価値は時間により目減りします。なぜなら、人間には寿命があり無限の時間を使えるわけではないからです。

20代で手に入れた1000万円と、70代で手に入れた1000万円では、圧倒的に20代で手に入れた100万円の方が価値が高い。多くの使い道が残されている時期と、もう全てが終わろうとしている時期では貨幣価値は異なるのです。

多くの人は借金と聞くと後ろ暗い印象を持ち、出来れば関わりたくないと考えています。しかし、借金はただの資産形成の加速器であり、上手く使えばずっと早くに目的の資産額を築く事が出来、下手に使えば猛スピードで破滅へ向かっていくというだけです。

ここに借金(金融)を学ぶ理由があります。住宅ローンや子供の教育費、病気や事故などの突発的な費用。自分は絶対に借金なんてしないと頑張ったところで、長い人生どうしても借金に頼らざるを得ない時もあるでしょう。借金はほとんどの人にとって避けられない存在であり、資産形成に多大な影響を与えます。金融(ファイナンス)の知識は現代日本人にとって必須の知識と言えるでしょう。

金融機関は銀行と銀行以外がある

金融機関には銀行(バンク)と銀行以外(ノンバンク)に分けられます。バンクとノンバンクの違いはなんでしょうか。銀行は不特定多数の人からお金を預かる事が許されています。しかし銀行以外の機関は銀行免許を持っていないため、このような事をすると出資法違反で逮捕されます。まさに銀行とそれ以外という括りなわけです。

代表的なノンバンクは貸す相手が個人なら消費者金融、クレジット会社、法人ならリース会社、商工ローンなどになります。

担保融資と無担保融資

担保融資は担保を取ってお金を貸す融資で、不動産担保融資、証券担保融資、自動車担保融資などが代表的です。無担保は担保を取らずにお金を貸す融資で、クレジットカード、消費者金融などが代表的です。金利は当然担保融資の方が有利になります。

クレジットカードも金融業

クレジット会社や信販会社もカードローンやキャッシングでお金の貸し出しを行っており、カードでの商品購入は一時的にお金を立て替えているので、お金を貸しているのと同じですから金融業に入ります。

カードローンとキャッシングの違いは、「使途無制限、リボ払い、無担保」がカードローン、「翌月一括返済、使途無制限、無担保」がキャッシングです。本来は支払い方法が違うものですが、中にはリボ払いなのにキャッシングとうたっているものもあり、利用者に混乱をもたらしているものもあります。

固定資産を流動化

金融は単なる借金以外にも固定資産(土地、家屋、償却資産など)の流動化に活用する事が出来ます。日本で資産家と呼ばれる人達の多くは不動産を保有しており、現金はあまり持っていません。帳簿上は資産家扱いされますが、実際の生活は年金で慎ましくという人が大半なのです。

固定資産はそう簡単に売却出来ませんから、資産家でありながら資産を活用出来ない、宝の持ち腐れにしている人が多いのです。こういう場合に固定資産を担保にお金を借り入れる事で、固まっていた固定資産を流動化させ簡単に活用する事が出来るようになります。

金利とは何か?

金利とは

金利は借金の借り方が貸し方に支払う料金であり、それを年率換算したものです。例えば金利3%で100万円借り入れた場合、一年間に支払う金利は

1,000,000 × 0.03 = 30,000円

になります。この3万円が100万円を借りる料金です。金利の決定に影響を及ぼす要因として最も大きいのが借り方の信用度。一般に信用度が低いほど貸し方はリスクが高まるため金利が高くなります。

金利は何で決まる?

金利は基準金利(政策金利)を元に設定され、金利は中央銀行(日銀)が決める「基準割引率および基準貸付利率」と金融市場が決める「短期金利」や「長期金利」があります。

基準割引率および基準貸付利率は、かつて公定歩合と呼ばれていたもので、中央銀行が民間銀行にお金を貸す時の金利です。

短期金利は銀行など金融機関同士の、短期の資金の貸し借りを行うコール市場(金融機関のごく短期の資金の貸借を行う市場)で決まる金利です。

長期金利は「10年もの国債」の金利を基準に債券市場で決まる金利です。基本的に債券市場で市場メカニズムにより決まるため、市場参加者の将来の物価変動、将来の短期金利などの予測により変動します。

長期金利は1年以上の資金の貸し借りに影響する金利ですから、企業の銀行からの融資の金利、個人の住宅ローンの金利などがこれに当たります。

長期金利が国債の金利に連動するなら、国債価格はどのようなメカニズムで決定するのでしょうか。まず国債には「額面」がありますが、価格は債券市場で金融機関の入札で決まります。当然、市場原理が働きますから需供関係により、買い手が多ければ価格が上がり、売り手が多ければ価格が下がります。

  • 需要が多いと国債価格は上昇する
  • 供給が多いと国債価格は下落する

国債の金利は額面金額と表面利率で決まりますから、額面よりも安い値段で購入出来れば、金利が高くなります。例えば額面100円、金利2%の国債があったとします。2%ですから額面通り100円で購入すると年利2%(2円)になります。

これをもっと安く99円で購入したとします。一年で貰える金額は変わりませんから、99円でも一年後に2円受け取れ、さらに額面100円が戻って来ます。

100円と99円の差額1円、利回り2円を合わせた利益3円が最終的に残ります。3円 ÷ 買値99円 = 3.03%ですから、額面金額より高く買えば金利は下がり、額面金額より安く買えば金利が上がるという事になります。

  • 買い手が多いと国債価格は上昇し、結果として金利は低下する。
  • 買い手が少ないと国債価格は下落し、結果として金利は上昇する。

逆に言うと金利が上がっているという事は国債価格が下落している、金利が下がっているという事は国債価格が上昇している、という意味になります。では、市場参加者は何を考えて国債を買う、売るを決めているのでしょうか。市場参加者は、将来のインフレ率や金利の動向を予想して売買を行います。

国債は安全資産ですがその分リターンも小さい商品です。それと比べると株式などはリスクは高まりますが高いリターンも期待出来ます。景気の先行きが明るいと思えば国債を売って、多少リスクを取ってもリターンの高い株式等に投資する参加者が増えるでしょう。

景気のが先行きが悪いと考えれば、リターンが低くとも安全な国債を買っておこうと考える参加者が増えます。つまり景気が回復してくると長期金利は上がり、悪くなると長期金利は下がるのです。この関係が長期金利が国の体温計などと呼ばれる理由です。

プライムレート

プライムレートは、銀行が財務内容の優れた優良企業などに融資する際の金利(最優遇貸出金利)の事で、1年未満の短期融資の金利を「短プラ」、1年以上の長期融資の金利を「長プラ」と言います。

以前は銀行を倒産させないために、旧大蔵省が日本興業銀行(現みずほ銀行)と協議し、それを各銀行が追随する護送船団方式が行われたいましたが、金融ビッグバンの嵐の中で存在感を失い、現在は1989年に導入されたCD(譲渡性預金)など市場金利を元に決められる「新短期プライムレート」、1991年に導入された都銀が独自基準で決定する「新長期プライムレート」が主流になっています。

TIBOR(タイボー)

TIBOR(Tokyo InterBank Offered Rate:タイボー)は、国内の金融機関同士が資金を貸し借りする時の基準金利です。各営業日の毎朝11時に全銀協の決めたリファレンスバンクが一斉に、対金融機関向けの貸出金利を提示し、上位2行、下位2行の計4本を除いたレートの平均を出して決定されます。

TIBORは1週間、1~12ヶ月の計13種類が存在し、短期、中期の基準金利として広く使われています。

固定金利と変動金利

金利には大きく分けると固定金利と変動金利があります。固定金利は返済期間の金利を固定させた金利で、変動金利は大体半年に1回、市場金利(TIBORや長プラ)に合わせて金利が改定されていく金利です。一般的な人に関わりが深いところでは、住宅ローンの借り入れ時に銀行の窓口担当者から固定金利か変動金利か選ぶよう求められます。

固定金利は期間内に市場金利がどれだけ上がっても、支払額が変更される事はありませんが、変動金利は市場金利が上がればそれに伴って上がるため、どこまでも上がる可能性があります。一概にどちらが有利だとは言えませんが、今後金利が上昇していくのなら固定金利が、今後も現在のような低金利が続くのなら変動金利が有利だというだけです。

一口に固定金利、変動金利と言っても細かな条件の違いで色々と種類があります。その中の一つに「上限金利付変動金利」があります。これは読んで字の如く例えば「期間10年、上限利率4%、変動金利2.5%」などとなっている金利です。基本は変動金利で返済期間の半年に1回、市場金利に合わせて金利が変動しますが、上限である4%を超える事はない金利です。大抵は単なる変動金利より高く、その差は上限利率という保険料だと捉える事が出来ます。

日本の金利は2024年現在非常に低いので、これ以上下がりようがないという事から、固定金利でローンを組んだ方が良いと主張する人が多いようですが、最終的には自己責任ですから自らの意志によって決めるのが適当でしょう。

個人情報データベースとは?

借り方の信用はどう計られる

金融機関にとって借り方の信用度は非常に重要です。信用度の低い人は返してくれず丸損になるのですから当然でしょう。そのため金融機関は相手の信用に非常に敏感です。

銀行やクレジットカード会社が最初に調べるのが借り方の返済履歴です。一度でも返済を怠った人は統計的に何度も返済を怠る可能性が高いと判断されます。以前は色々あって返済しなかったけれど今は大丈夫と言ってみても、金融機関はそれだけでは信用してくれないでしょう。

では金融機関はどうやって情報を取得しているのでしょうか? 日本には借り方の情報が記録されたデータベースが存在し、金融機関はデータベースを参照する事で借り方のクレジット・ヒストリーを知るのです。これらデータベースには借り方のクレジットや消費者ローンを利用した際の契約内容、支払状況、残高などが記録されます。クレジットや消費者ローンの契約書には必ず取引記録が登録される旨が書かれていますから、チェックしてみるといいでしょう。

個人情報データベースの種類

個人情報データベースには以下があり、

全国銀行個人信用センター(KSC)
銀行、信用金庫、信用組合、労働金庫、農業協同組合などの金融機関と、銀行系クレジットカード会社、保証会社、住宅金融公庫などの会員から提供された情報をデータベース化したもの。

CIC
クレジットカード会社、信販会社、百貨店、量販店、銀行系クレジット会社、保証会社などの会員から提供された情報をデータベース化したもの。

JICC
CICと同じくクレジット会社を中心としたデータベース。前身はテラネット、CCB、全国信用情報センター連合会。

が存在します。借り方がローンを組んだり消費者金融からお金を借りようとすると、金融機関はこれらデータベースを参照します。登録された個人情報は本人もしくは代理人に限り閲覧する事も出来ます。気になる人は一度確認してみてもいいでしょう。

また運転免許証などの本人確認書類を紛失してしまい、勝手に自分の名義を使われないよう本人申告として、その旨を登録する事も出来ます。

ホワイト情報とブラック情報

返済に滞りの無い通常の情報を通称ホワイト情報、返済が滞った事故情報を通称ブラック情報と呼びます。そしてこのブラック情報を交換する、全国銀行個人信用センター、CIC、JICCの3つのデータベースを連結したCRIN(Credit Information Network:クリン)というネットワークと、官報に公告された破産宣告などの記録情報を提供するPRIS(Public Record Information Service:プリス)という公的記録情報サービスが存在します。

つまりブラック情報は各金融機関に共有されており、過去に返済の遅滞などを起こしていれば、金融機関には一発でバレてしまうのです。事故情報が載っている人に金融機関は絶対にお金を貸したり、クレジットカードを発行したりしませんから気を付ける必要があります。

うっかり入金日に口座の残高が足りなかったなどの簡単なものでは、事故情報として登録される事はありませんから安心して下さい。事故情報が登録されるのは6ヶ月以上の遅滞であり、大抵は金融機関からこのままだと事故情報が載る前に警告が来ます。ブラック情報は保存期間が過ぎれば抹消されます。

以下はそれぞれの保存期間です。

登録内容CICJICCKSC
申込情報6ヵ月6ヵ月1年
契約情報5年5年5年
返済情報5年5年5年
延滞情報5年5年5年
貸付自粛情報5年5年5年
自己破産5年5年7年
個人再生5年7年
任意整理5年
強制解約5年

個人情報を開示する

ここでは実際に個人情報を開示する方法を解説します。

全国銀行個人信用センター

全銀連は窓口に受付は出来ず、郵送のみとなっています。詳しくは本人開示の手続きについて|全国銀行協会を確認して下さい。

申込者やり方必要な物
本人本人が必要書類をセンター(東京)に郵送し、センターから本人限定受取郵便(特例型)が郵送されます。登録情報開示申込書
本人確認資料(2点)
開示手数料1,000円
法定代理人法定代理人が必要書類をセンター(東京)に郵送し、センターから本人限定受取郵便(特例型)が法定代理人に郵送されます。登録情報開示申込書(法定代理人用)
本人確認資料(2点)
法定代理人の本人確認資料(1点)
法廷代理権を証する資料
開示手数料1,000円
任意代理人任意代理人が必要書類をセンター(東京)に郵送し、センターから本人限定受取郵便(特例型)が本人に郵送されます。登録情報開示申込書(任意代理人用)
本人の委任状
本人の印鑑登録証明書
本人の本人確認資料(1点)
本人の現住所が確認できる資料(1点)
任に代理人の本人確認資料(2点)
開示手数料1,000円

CIC
CICはインターネット、郵送、窓口で情報開示する事が出来ます。インターネットの場合、初回開示1,000円、サイトで手続きし、クレジット等の情報として登録している固定、携帯電話から電話し、聞いた受付番号をサイトに入力する事で開示、閲覧する事が出来ます。詳しい方法は自分の信用情報を確認する|指定信用情報機関のCICを確認して下さい。

JICC
JICCでは系端電話、郵送、窓口での情報開示を行う事が出来ます。費用は1,000円で携帯の場合、専用アプリで本人確認書類を贈る事で、JICCから本人限定受取郵便(特例型)で開示書が郵送されてきます。詳しくは開示を申し込む | 開示サービス | 日本信用情報機構(JICC)指定信用情報機関を確認して下さい。

自分の借入枠を知ろう

借りられる金額は年収の3分の1

金融機関は借りたいと言えばいくらでも貸してくれるわけではありません。内規で年収に対し、どの程度融資可能か決めており、銀行などは年収の1/3と厳しく、クレジットカードは銀行よりはもう少し貸してくれます。特に販促期間中は年収を超える額のカードも発行したりします。

クレジットカードの場合は、限度額はカード会社毎に決まるのではなく、現在借り方が持っているカードの限度額も含めた合計になります。一般的な審査でAさんが500万円借りられるとしても、今持っているクレジットカードの合計が500万円の場合、一度も使っていなくとも審査担当者はあなたには貸せませんと融資を拒否します。

銀行は年収の1/3ですから、年収1000万円の人は約300万円借りられますが、既に500万円分のカードを持っていれば、その時点で融資を断られてしまいます。融資してもらいたいのなら使っていないカードを解約しなければなりません。

金融機関の審査

金融機関はいくら年収があろうが返済意識の無い人には貸しませんから、融資額がいくらだとしても、そもそも貸してもらえなければ意味がありません。審査に通りやすい人とそうでない人は何が違うのでしょうか。

年収に次いで大きいのが「職業」と「家族構成」です。はっきり言えば借金が会社や家族に知られると困る人ほど借りやすいという事です。なぜならそういった人達は返済に対する意欲が高く、丸損の可能性が低いからです。クレジットカード等がサラリーマンは通りやすく、自営業者は通りにくいのもそのためです。

消費者金融の利用

クレジットカード会社と提携している業者は、個人情報データベースにカードを作るだけで登録されますが、そうではないマイナー業者での融資は登録されません。事前に消費者金融でいくらかカードを作り、その後で銀行などから融資を受ける事で、本来の借入枠以上の借り入れが出来る場合があります。

消費者金融でお金を借りるにはカード(口座)を作りますが、作れば必ず借りなければならないというわけではありません。勧められる事はあるでしょうが、絶対ではありませんし、しつこい業者は避ければよいでしょう。

もし何かしらの理由でいざという時のため、もう少し借入枠を増やしておきたい場合に、取り敢えず消費者金融でカードを作り、銀行などから融資を借入枠一杯に受け、その万が一が来た時に緊急で消費者金融から借り入れるという事も出来る場合があります。

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